テクニカル分析指標の中でも最も知名度が高い移動平均線。
移動平均線は、ボリンジャーバンドやMACDといった有名テクニカル分析指標の元になった存在でもあり、テクニカル分析指標を語るうえで移動平均線は重要です。
また、移動平均線はFXだけでなく株式投資や他の金融商品でも扱われ、【テクニカル分析指標 = 移動平均線】と考えるトレーダーもいるくらいです!
今回は移動平均線という最もポピュラーでありながら奥深いテクニカル分析指標を徹底的に解説していきまましょう。
- 移動平均線の基礎・応用知識
- 移動平均線で理解できること
- 3種類の移動平均線の違いについて
- MT4/MT5/TradingViewで移動平均線を表示させる方法
- 移動平均線の使い方・注意点
- 移動平均線と組み合わせるべきテクニカル分析指標
下記記事もご参考までに!
移動平均線とは?
移動平均線は米国の金融記者であるジョゼフ・E・グランビル氏が開発しました。
グランビル氏考案の移動平均線は、設定した一定の期間の平均値を線で結び表示しています。たとえば、30日移動平均線の場合は、30日間の終値を平均化して表示します。
また、各移動平均線の英語表記は以下のとおりです。
- 移動平均線 = MovingAverage(MA)
- 単純移動平均線 = Simple MovingAverage(SMA)
- 指数平滑移動平均線 = Exponentially MovingAverage(EMA)
- 加重移動平均線 = Weighted MovingAverage(WMA)
移動平均線はシンプルなトレンド系テクニカル分析指標よ!
初めてテクニカル分析指標を活用する人でも簡単に理解できるため非常に使いやすく感じるはずです。
移動平均線がもたらす効果
移動平均線は、複数のテクニカル分析指標や数多くのトレーダーが参考にしていることから市場に一定の効果をもたらします。
実際、移動平均線のラインでは攻防が繰り広げられることが多く、特に長期間の移動平均線は意識される価格帯です。
- 移動平均線に沿って売買するトレーダー
- 反発を見越して売買するトレーダー etc….
様々な思惑が入り混じって価格を形成します。
以上のように移動平均線は売買の基準になることもあり、移動平均線は市場に効果をもたらすテクニカル分析指標と言えるでしょう。
移動平均線の計算式
移動平均線の計算式はシンプル。
たとえば、10日移動平均線であれば以下の計算式で成り立ちます。
移動平均線=直近終値+1日前の終値+2日前の終値+・・・9日前の終値÷10
単純移動平均線の計算式は以下のとおりです。
単純移動平均線=(設定期間日数の価格の合計)÷設定期間日数
指数平滑移動平均線の計算式は以下のとおりです。
指数平滑移動平均線=指数平滑移動平均線(n-1)+a×{価格-指数移動平滑移動平均線(設定期間日数-1)}
加重移動平均線の計算式は以下のとおりです。
加重移動平均線=設定期間日数×価格プラス(設定期間日数-1)×価格+・・・(n-1)1+2+・・・設定期間日数
加重移動平均線の場合、仮に10日加重移動平均線を計算したい場合は、10日目の価格を10倍9日目の価格を9倍という風に順に計算していき最後に合計10で割ります。
各計算式は小難しく感じるかもしれませんが、海外FXでは売買に取引プラットフォームを活用します。
取引プラットフォームでは各移動平均線の数値を設定すれば自動でチャート上に表記してくれるため計算する必要性はありません。
また、各移動平均線の計算式を知っていても利益やトレード成績には無関係。
あくまで移動平均線のひとつの知識として覚える程度で大丈夫です。
こんな感じか~くらいで思ってくれていればOK!
移動平均線では何がわかる?
移動平均線をチャートに表示すれば以下の3つを理解できます。
- トレンド発生の有無
- トレンドの強弱
- 2種類の移動平均線を活用したトレンド転換
トレンド発生の有無
移動平均線の向きを見るだけでトレンド発生の有無がわかります。
- 移動平均線の向きが右上 = 上昇中のトレンド
- 移動平均線の向きが右下 = 下降中のトレンド
- 移動平均線の向きが平行 = レンジ相場
トレンド相場かレンジ相場か把握できれば相場に合った取引方法を選べるぞ!
これならとっても覚えやすい!頑張りますっ
トレンドの強弱
移動平均線は以下の違いでトレンドの強弱を把握できます。
- 移動平均線の向きが緩い = ゆったりしたトレンド
- 移動平均線の向きが急 = 短期間で発生したトレンド
どちらかと言えば移動平均線の向きが緩いほうが長期的なトレンドになりやすいですが、一歩下がって二歩進む状態なので短期間で利益は見込みづらいです。
一方、移動平均線の向きが急な場合は、経済指標やなんらかの理由で強引にトレンドが発生した可能性が高いです。
一気に利益を増やせるかもしれませんが、あっという間に価格が元値に戻ることもあるので注意すべきトレンドと言えるでしょう。
2種類の移動平均線を活用したトレンド転換
移動平均線は、短期移動平均線と中期移動平均線そして長期移動平均線を表示できます。
短期移動平均線+中期移動平均線または長期移動平均線を表示するのが基本です。
2種類の移動平均線を表示させた際に確認できるのがゴールデンクロスとデッドクロス。どちらもトレンド転換時に発生しやすい特徴があります。
- ゴールデンクロス = 短期移動平均線が中期・長期移動平均線を上に抜いていく
- デッドクロス = 短期移動平均線が中期・長期移動平均線を下に抜いていく
ゴールデンクロスとデッドクロスを理解しておけば、トレンド転の初動に乗れる確率が高まります。
移動平均線の種類
移動平均線は以下の3種類があります。
- 単純移動平均線
- 指数平滑平均線
- 加重移動平均線
いずれも移動平均線ですが、特徴が異なるので注意してください。
単純移動平均線
単純移動平均線の英語表記は【Simple Moving Average、SMA】と略されます。
単純移動平均線は一定期間の価格を足して割る性質上、丁寧に価格を反映しません!
○日前に一日だけ急激な相場変動が起きた場合、その日を足してしまうので現時点の単純移動平均線も乖離してしまいます…
たとえば、5日移動平均線で5日前の価格と前日の価格どちらが現在の相場環境を反映しているでしょうか?
明らかに前日の価格のほうが現在の相場環境にマッチしています。
しかし、単純移動平均線では5日前の価格も前日の価格も同じ扱いになり、より近い日の相場環境を反映しづらいデメリットがあります。
指数平滑平均線
指数平滑移動平均線は、前日の指数平滑移動平均線を算出したうえで直近の価格を重視した移動平均線です。
過去の価格も反映する性質上、指数平滑移動平均線はバランス型の移動平均線。
指数平滑移動平均線は3種類の移動平均線の中でも人気があり、移動平均線=指数平滑移動平均線と考えるトレーダーもいるくらいです。
加重移動平均線
加重移動平均線は近ければ近いほど当日の価格に影響を与える(過去の価格ほど影響は小さくなる)という考えの移動平均線です。
直近の価格を重視した加重移動平均線は設定した過去の価格に大きな変動があっても当日の加重移動平均線に与える影響は小さくなります。
先に説明した指数平滑移動平均線は設定した期間の価格よりも前の価格も含みますが、加重移動平均線は設定した期間の価格しか含みません。
設定した期間に限定して表示したい場合は加重移動平均線、設定した期間より過去の価格も含んで表示したい場合は指数平滑移動平均線といった使い分けができるでしょう。
移動平均線の使い方
移動平均線の使い方を動画で解説しています。
文字だけでは理解できない部分もあると思いますのでぜひ確認してみてください。
移動平均線の表示方法と数値
移動平均線の表示方法と数値を解説していきます。
ここではパソコン版とスマホ版のMT4/MT5/TradingViewといった海外FX業者でよく使われる取引プラットフォームの表示方法を説明します。
パソコン版MT4/MT5で移動平均線を表示する方法
❶MT4/MT5にログインします。
❷挿入をクリックします。
❸インディケータをクリックします。
❹トレンドをクリックします。
❺MovingAverageをクリックします。
以上の手順でパソコン版のMT4/MT5のチャート上に移動平均線を表示できます。
また、他の移動平均線を表示したい場合、パラメータの【移動平均の種別】から自由に選べます。
スマホ版MT4/MT5で移動平均線を表示する方法
❶MT4/MT5にログインして画面上部の「f」マークをタップします。
❷インディケータのトレンドの項目から「MovingAverage」を選んでタップします。
❸メソッドで表示したい移動平均線の種類を選びます。
❹画面右上のかんりょうをタップすればチャート上に移動平均線が表示されます。
以上の手順でスマホ版MT4/MT5のチャート上に移動平均線の表示が完了します。
パソコン版TradingViewで移動平均線を表示する方法
❶TradingViewにログインします。
❷インジケーターをクリックします
❸テクニカルをクリックします。
❹インジケーターの項目から表示したい移動平均線を選んでクリックします。
以上の手順でTradingViewのチャート上に移動平均線を表示できます。
スマホ版TradingViewで移動平均線を表示する方法
以上の手順でスマホ版TradingViewのチャート上に移動平均線の表示は完了です。
移動平均線で設定する数値
移動平均線で設定する数値は自由に行えます。
ただ、一般的には短期・中期・長期いずれかまたは複数の移動平均線を表示させます。
ここでは代表的な短期・中期・長期の移動平均線の数値を紹介しましょう。
- 短期移動平均線 = 5
- 中期移動平均線 = 50
- 長期移動平均線 = 100
他にも20、21、25、75といった数値が多くのトレーダーで使われています。
一般的に移動平均線には5の倍数の数値を設定。
理由は、1週間に為替市場が5日しか開かない性質を考慮しているから、と言われています。
移動平均線の見かた
移動平均線の見方は以下の3種類が代表的です。
- ゴールデンクロスとデッドクロス
- パーフェクトオーダー
- 移動平均線がローソク足より上か下か
それでは、移動平均線の3種類の見方を個別に解説していきます。
ゴールデンクロスとデッドクロス
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスは大事な見方です。
短期移動平均線が長期移動平均線を上向きに抜いたり短期移動平均線が長期移動平均線を下向きに抜いたりしたときにゴールデンクロス・デッドクロスが発生します。
ゴールデンクロスやデッドクロスはトレンド転換のサイン。
ただし、毎回トレンドが完全に転換するわけではありません。
他のテクニカル分析指標を組み合わせてダマシを回避する確率を高めれば、より上手くゴールデンクロスやデッドクロスの恩恵を受けられるでしょう。
パーフェクトオーダー
移動平均線のパーフェクトオーダーとは、短期移動平均線・中期移動平均線・長期移動平均線の3種類すべてが同じ方向にトレンドが発生している状態です。
パーフェクトオーダーのデメリットはトレンドが完全に発生した状態でしか判断できず、トレンド初動に乗って大きな利益を狙うことはできません。
トレンド初動に乗って結果的にパーフェクトオーダーになれば大きな利益を狙えるので、他のテクニカル分析指標やゴールデンクロス・デッドクロスを組み合わせて見極めましょう。
移動平均線がローソク足より上か下か
移動平均線の場所がローソク足より上か下かによって相場状況を判断します。
ローソク足より下に移動平均線があれば買い圧力が優勢、ローソク足より上に移動平均線があれば売り圧力が優勢と判断できます。
ただし、ローソク足と移動平均線が乖離すれば反発してくる勢いが強まるケースもあり、圧力だけで判断するのは少々危険です。
対処法として、他のテクニカル分析指標を活用して、より精度の高い売買を検討してください。
移動平均線と相性の良い組み合わせ
移動平均線と相性の良いテクニカル分析指標の組み合わせを3つ紹介します。
- 移動平均線 × MACD
- 移動平均線 × RSI
- 移動平均線 × 一目均衡表
以上の3つは移動平均線と特に相性の良い組み合わせ。ここでは個別に各組合せの特徴に関して解説していきます。
移動平均線 × MACD
移動平均線もMACDもどちらもトレンド相場で活躍するテクニカル分析指標。
どちらのテクニカル分析指標もゴールデンクロスやデッドクロスがあり、エントリータイミングがわかりやすく判断できます。
たとえば、MACDでゴールデンクロスやデッドクロスが発生した際に、移動平均線の傾きからトレンドの方向感を予測します。
上昇トレンド、下降トレンドの相場把握にも使いやすく、売買どちらでエントリーするべきか迷った場合に活きる組み合わせです。
移動平均線 × RSI
RSIは買い過ぎや売り過ぎを判断するテクニカル分析指標。
移動平均線だけでは相場の過熱感が把握しづらく「まだまだ上昇するだろう」や「まだまだ落ちるだろう」という曖昧な気持ちでポジションを持ち続けるケースも少なくありません。
その点、RSIは買い過ぎや売り過ぎを数値で示すため、移動平均線の傾きはトレンド状態でも決済や逆張りのタイミングを把握できます。
また、移動平均線のゴールデンクロスやデッドクロスを組み合わせれば、より根拠のあるエントリーができるでしょう。
移動平均線 × 一目均衡表
移動平均線と一目均衡表をチャート上に表示すれば一発で相場環境がわかります。
一目均衡表のひとつ「雲」は分厚さで相場環境を示します。
たとえば、分厚い雲が現在価格の下や斜め右下にあれば上昇トレンドの可能性が高いです。
ただし、それだけでは確実ではありません。
さらに上昇トレンドの確率を高めるためにゴールデンクロスは発生したかパーフェクトオーダーになっているかを移動平均線で確認します。
両方揃った状態であれば、今回のケースではほぼ上層トレンドが確定しますので、押し目でエントリーして売買するのが得策です。
このように移動平均線と一目均衡表を組み合わせて相場環境を把握できれば、エントリーの根拠をより強められるでしょう。
移動平均線を使うときの注意点
移動平均線を使うときの注意点は以下の3つです。
- 移動平均線はあくまで過去の平均でしかない
- 表示する移動平均線の種類を間違えない
- 移動平均線の数値の意味を考えるべき
いずれも移動平均線を使ううえで注意するポイントなので個別に解説していきます。
移動平均線はあくまで過去の平均でしかない
移動平均線は過去の価格を参考にしています。
過去の価格は現在の価格に反映されるのは事実ですが、過去の価格にとらわれ過ぎるのはリスクがあります。
たとえば、スイスフランショックのような予期せぬ状況に市場が陥った際は、過去の価格は役に立ちません。
たしかに、最近予想だにしていないことが色々起こってますもんね…
平常の相場環境であれば移動平均線は参考になるテクニカル分析指標ですが、ファンダメンタルズ分析が関わるような急な相場変動で使うのは注意してください。
表示する移動平均線の種類を間違えない
チャート上に表示する移動平均線の種類を間違えるとエントリー根拠が変わります。
たとえば、単純移動平均線と指数平滑移動平均線では価格と移動平均線の乖離が異なり、乖離率を根拠にエントリーする場合は注意が必要です。
移動平均線は英語表記でSMAやEMAといった略語の場合もあり、うっかりミスで設定を間違えることもあるので表示前は要確認しましょう。
移動平均線の数値の意味を考えるべき
移動平均線に設定する数値の意味を理解せず利用するべきではありません。
たとえば、移動平均線の数値に5を入力するトレーダーは多いですが、その5の意味について理解していないトレーダーは少なくありません。
移動平均線の5の数値は市場が一週間で5日しか開いていない、という理由の5のことだぞ
ということは、日足に移動平均線を表示させて設定を5にするのは意味がありますが、1分足で5を設定してなんの意味があるのでしょうか?
5分前でも6分前でも4分前でも1分足で移動平均線を表示するかぎりはさして意味がありません。
逆に週足でも同じことです。
移動平均線を5にして5週前から確認する意味はありません。
まだ1カ月単位として4に数値を設定するほうが意味はあるでしょう。
このように移動平均線でよく設定される数値は表示する時間足に対して意味がああるのか意味がないのか考えて使う必要性があるのです!
まとめ
今回は移動平均線に関する基礎知識から実践で使える応用知識まで詳しく解説してきました。
移動平均線はあらゆるテクニカル分析指標の元になっていたり他のテクニカル分析指標と相性が良かったり、非常に使いやすいです。
一方、移動平均線には単純移動平均線・指数平滑移動平均線・加重移動平均線と3種類あり、それぞれ特徴が異なり複雑に感じるかもしれません。
自身のトレードスタイルに合致した移動平均線を使うことが利益に直結する確率を高めるでしょう。
それでは最後にこの記事で説明した重要なポイントをまとめておきましたので、おさらいしておいてください。
- 移動平均線は3種類(単純移動平均線・指数平滑移動平均線・加重移動平均線)ある
- MT4/MT5/tradingViewその他取引プラットフォームでも使える
- ゴールデンクロスやデッドクロスでトレンド転換を把握できる
- パーフェクトオーダーでトレンド状況が一目でわかる
- MACD/RSI/一目均衡表等、複数のテクニカル分析指標と相性が良い
以上、移動平均線で知っておくべき情報をまとめておきました。
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